医療制度や病院、薬局、薬科大学の現場のあれこれをわかりやすく考察するコーナー。
筆者の豊富な経験と鋭い切り口で展開します。


薬剤師の役割

薬剤師について今回は書かせていただきます。薬剤師が薬剤師についてもの申すのはアレって思われるかたもいらっしゃるでしょう。薬剤師はまじめで勤勉で・・という方、あるいは融通がきかないプライドが高い、など色々なイメージをお持ちの方がいると思います。最近、エビデンスという言葉がよく聞かれます。メーカーが薬のデータを集めて薬の効果などを調べています。「最近こういうエビデンスがあります」とパンフレットにもありますね。そうか〜と私も勉強になることが多々あります。ここでクエスチョン!人間はみな同じではありませんよね。そのエビデンスはみな同じように当てはまるのでしょうか?答えはNO!そのエビデンスはAさんには当てはまりますがBさんにはまったく当てはまらない場合もあります。ここで薬剤師の見せ場です。服薬指導でAさんの薬の効果とBさんの薬の効果は同じ薬でも違いますのでドクターにフィードバック!エビデンスが絶対ではありません。また世の中には同じ薬がたくさんありますよね。患者様にとっては薬はよくわからないものなんです。薬剤師から言われて「あっそうか」と気がつくこともあります。値段の高い薬がたくさんあって患者様の負担になる場合もありますよね。最近医療行政もパンクしてきてジェネリック薬が新しい存在ですがちょっと待った!ジェネリックでなくても薬価の安い薬はたくさんあります。たとえば胃の調子が悪い患者様。ザンタック、ガスター、など比較的薬価の高い薬もありますがもしアルサルミンなど薬価の安い薬で治ったらどうでしょう?薬剤師は患者様のふところぐらいまで考えたことがありますか?これからの薬剤師は医療経済的なこともドクターに提案できることも大事ではないでしょうか?
一人一人薬の効き方も違いますし懐具合も違います。データがすべてではありません。一人ひとりにあった処方設計とその提案。ここまで考えられる薬剤師こそが本当に患者様のことを考えられる薬剤師ではないでしょうか?ドクターは各個人個人の患者様の薬の効果、本音を待っています。フィードバックしてよりよい、ドクター、薬剤師、患者様との関係ができればコンプライアンスも上がるし治療効果もあがると思います。最近患者様のことをみずに検査結果などのモニター画面しか見ないドクターの話題もちらほら聞きますが薬剤師もメーカーのエビデンスデータ重視の薬剤師では前述のドクターと同じです。一歩進んだ薬剤師の役割を考えてみませんか?


ジェネリック医薬品ってどうなんでしょう?

最近テレビでもジェネリック医薬品ということばをよく耳にします。私が勤務している薬局でも患者様からジェネリックでお願いしますと言われることも時々あります。国の医療行政もパンク寸前であるために薬価の安いジェネリックを普及させようと啓蒙活動をし始めたところですね。中には病院の処方箋中の薬を一般名処方で書いているものもあります。病院でジェネリック医薬品を載せた処方箋を発行すると先発品のみの処方箋りも2点高く算定できます。2点でも「チリも積もれば山となる」原理でジェネリック医薬品を掲載した処方箋は病院経営にとって多少のプラスとなります。では薬局ですが後発品調剤をするとひとつの薬剤につき2点多く算定できます。つまり20円多くいただけるわけですね。薬というのはとても高額で人箱購入して5000円以上はすぐかかります。ジェネリック医薬品が増えると薬局の在庫がどんどん増えていきます。ジェネリック医薬品にも色々なメーカーのものがあります。なかには処方中にメーカーを指定してくるドクターもいて当然のことながら一般的には他のメーカーのジェネリックは出せません。2点多く算定してもそのためにそろえる薬のコストを考えるとかえってコストがかかりマイナスになります。薬局にとったら現段階ではジェネリック医薬品の処方が増えることに関してはほとんどメリットはないと思います。また患者負担を考えると多少安くなることは患者にとってプラスだと思いますがまだまだ安定性に疑問が残る部分もあります。レニベースを服用されていた患者が後発品に切り替えたら調子が悪くなりもとのレニベースに戻ったという例もありました。私はよくこのコラムも理想と現実という観点から論点を述べているのですがこの国も普及させようとしているジェネリック医薬品政策はまだまだギャップがかなりあると思います。処方箋も成分名でかかれていたら薬局がまず在庫しているジェネリック医薬品を探して患者に説明して資料を渡してお渡しするということもできますが最初の処方箋は成分名で書かれてきてその患者が二回目に処方箋をもってきたら成分名ではなく商品名で書かれている処方箋もあります。理由を聞くと「病院側がレセプトの都合上商品名を記載しなければならないから」という理由。これでは一般名処方の意味があまりありません。最近代替調剤政策も提唱され処方箋に「代替調剤可」というハンコが押してあり薬局の判断にまかせるという病院も出できました。薬剤師というのは仕事柄上?「医師の指示のもと」という原理原則がありこの掟を破るわけにはいきません。また代替調剤でジェネリック医薬品を調剤してきっちり患者やドクターにその根拠などを説明できる力量のある薬剤師もまだまだ多くはいないと思います。ジェネリック医薬品を調剤して患者の病態が悪くなったらこれは誰の責任になるのかなぁと考える薬剤師も多くいるのでまだまだ処方通り先発品を使う薬局が大多数だと思います。いずれにせよジェネリック政策が現行のままであれば病院薬局双方にメリットはないでしょう。一番うれしいのは製薬メーカーではないでしょうか?薬局サイドからジェネリック政策を推進していくにはこの2点では少なすぎるフィーだと思います。前回のコラムでもかきましたがフィーが伴わない政策をしても現実的には世の中では普及していかないと私は思います。いや今の状態ならジェネリック医薬品を多数そろえていくことはう薬局経営サイドを考えた場合むしろ経営を圧迫する原因のひとつとなるため渋い顔の経営者も多数いると思います。医療費抜本的政策を考えるなら薬局サイドにメリットのあるフィーを考えてほしいです。


在宅医療の現状

先月在宅医療関連の研究会に参加してきました。
ドクター、ナース、薬剤師など医療に携わる関係者の意見交換と症例紹介などがありました。そこで在宅医療が提唱され推進されている昨今とその理想と現実のギャップなど真剣な討議がありました。
薬剤師側からの現状と問題点として
*高カロリー点滴の無菌調整業務に関する診療報 酬の不十分であること
*輸液の配合変化や安全性に関する長期的データ が不十分であること
*微量元素など特殊注射剤の調整、払い出しが困 難であること
*薬局から遠隔地にある患者宅への訪問指導
*医療系廃棄物処理
というポイントが挙げられました。
看護師側からの問題点として
*マンパワーの確保と看護指導料が現状では見合 わないこと
*病棟看護師の早期からの退院を意識したケア意 識の欠如
*訪問看護ステーションとの連携、体制、力量
*在宅ターミナルを実施する往診医の数の確保
というポイントが挙げられました。
医師からの現状と問題点として
*若手医師の後継者がいない(休日もなかなかと れないため在宅医療を避ける)
*医師の年齢の問題(高齢になると体力的に厳し くなる)
というポイントが挙げられました。
これらの現状や問題点から在宅医療に関してはまず、それにともなう報酬があまりにも低いという点が大きな足かせになっていると痛感しました。
病院は「在院日数を削減したい」、でも「在宅医療の体制がきちんと整っていない」というのは大きな矛盾です。「在宅医療」という言葉は一瞬聞こえはよさそうですが現実として在宅に帰っても最後は病院で息を引き取るというケースがかなりあります。厚生労働省も在宅推進や介護推進政策を打ち出しながら来月より介護施設の居住費と食費は利用者負担にするなど打ち出す政策と現実が大きなギャップとなっていると思います。医療行政がパンク寸前の今日で国民負担が次第に多くなる現状ですが他の官庁の無駄遣いを削減して投入すべきところには医療費を投入する、現場の現実をもっと中央省庁が認識するという末端の現実と意見にもっと耳を傾けるべきだと思います。これらの理想と現実のギャップが解決しない限り在宅医療も空回りして普及しないと思います。


最近ある新聞で薬剤師から薬の説明として説明頻度の多い順として服用方法、効能効果、種類や成分、特徴、副作用、飲み合わせ、保管方法の順番が書かれてあり、患者様が知りたい情報としては効能効果、副作用、飲み合わせ、種類や成分、服用方法、保管方法の順となっていました。「なるほど」と思ったすが特に副作用や飲みあわせについての情報は患者様にとって関心が高いということが伺えて情報提供である薬剤師側と受け入れ側の患者側とのギャップが存在していると感じたのですが、服用する患者様の視点として考えた場合に飲んだ後のことを考えた時には、「副作用や飲み合わせ」が重要であると容易に気づくと思うのですが薬剤師として薬の視点から見てしまい、服用方法や効能効果に重点をおいてしまうのかもしれません。最近はサプリメントを摂取しながら薬も服用する患者様も結構多く、私もよく患者様から飲みあわせについてよく聞かれます。患者様のセルフケア意識の高まりが強いと感じるのですが薬剤師が勉強不足の部分としてサプリメント分野があると思います。薬と相性が悪いサプリもあり人気の衰えないコエンザイムQ10も一部飲みあわせに気をつけたほうが良いものもあります。「サプリですので大丈夫ですよ」と患者様に伝えていませんか?私も時々思うのですが薬剤師だから薬のことを知っているのは当然の事であり、それだけのフィーを患者様から頂いているのであるから薬の指導はいわばきっちりできて当然であると思います。患者様にプラスαの指導をするにはどうしたらいいか常々考えた時に、栄養指導であったり、コスメであったり、サプリであったり・・。薬剤師として患者様にどう接していくか、どのようにアプローチしていくかはその薬剤師の技量と人間性によるものだと考えます。最近チーム医療という言葉がよく使われますが、医師、看護師、薬剤師、栄養士、臨床心理士、理学療法士などチームで患者をサポートしていこうという考えです。最近、先進的な病院では早期退院を計画して栄養面から点滴のメニューを考えていく「NST」と呼ばれるチームを作り患者様を別の面からもサポートしていこうという動きです。私も在宅医療で高カロリー輸液を調整してケアするのですが微量元素やカロリー面、輸液と内服との飲み合わせなど日々勉強の毎日です。薬剤師としてどのように患者様と接してアプローチしていくか、また医師に情報をフィードバックしてより良い医療を受けて頂きQOLを高める工夫と問題解決の工夫とともに、医学的、精神的、倫理的観点から患者様やその家族にアプローチしていく必要があると実感しています。来年から薬学部も6年生になりますます勉強する時間が長くなると思います。学生時代はテストで追われるように知識を詰め込みがちで「つらいなぁ」と思うこともありますが現場に出てからは毎日が勉強であり、また自宅に帰っても専門書を広げたりネットで情報を検索したりなどさらに学習する時間が増えると思います。患者様により良い情報を提供して「ありがとう」と笑顔で言っていただいた喜びを実感するときには医療に進んでよかったと思います。また自分の薬局だけではなく他の薬局の方とも交流して情報交換したり勉強会で意見を出し合っり切磋琢磨することも薬剤師として大事だと思います。最近ある薬局のKさんとお会いして学会発表されたり論文投稿されたりして意欲的に活動されている方でとても新鮮で刺激になりました。もっと自分も頑張らなきゃ!と思ってしまいました!


11日土曜日、仕事が終わっあと新幹線に飛び乗り名古屋に行ってきました。特に学会でもなくプライベートで行ったのですが色々と町の薬局を見学して気づいたことがありました。駅前にはマツモトキヨシがありさすがだなぁと思ったのですがもちろん調剤薬局に勤務しているという職業柄上商品の陳列や値段にも興味があり注意深く観察しました。色々と見学してやはり地域制があるなあと思いました。大阪のようにPOPで目立たせて商品を売り込むわけでもなく大阪のディスカウントみたいに所狭しと商品を置くのではなく整然と陳列されていたのが興味深かったです。以前に北海道の薬局も見学したことがありましたがこちらは店舗スペースに余裕があったせいかもしれませんが商品と商品の陳列の感覚も余裕がありやはり整然と陳列されていました。実は興味深い内容を聞いたことがあります。真偽のほどはわかりませんが関東や北海道の患者様は待ち時間よりも服薬指導の内容や安全性に重点を置く傾向にあり関西は土地柄待ち時間や料金に対して敏感だというのを聞いたことがあります。確かに関西は待ち時間や料金に敏感です。ここで調剤薬局のサービスについて考えてみたいのですが、何が患者様にとってサービスなのでしょう?僕は患者様のニーズにあった内容だと考えます。玉虫色ですよね?患者様により一番のニーズは待ち時間である場合もありますし待ち時間よりもお薬の説明や副作用についてであったりもします。このニーズを個別に敏感に汲み取り対処できる薬局は繁盛すると思います。
最近ホテルもコンシェルジュを置きプロのおもてなしをしています。我々薬剤師もプロです。真のサービスを追及するのは当然のこと。ただ薬を出して説明するだけではサービスではありません。患者様の意を汲み取りそれに対応したサービスができてこそ値打ちがでるのではないでしょうか?ここまで目的意識を持ち仕事をしている薬剤師は現実のところそうそういないと思います。薬剤師もコンシェルジュ。薬の知識だけではなく幅広い知識を見につけて患者様のニーズにあったサービス、ドクターに対しても相応のフィードバックができる薬剤師になれてこそプロの薬剤師と言えると思います。


医薬分業が進み分業率もアップしてきたが医師は薬局をどのような位置づけで考えているのだろうか?処方箋にもとづき薬を作るところとしか考えていない医師も多いと思う。またそれ以上のことを求めていない場合もあるかもしれない。調剤薬局の目的である重複投与チェックや相互作用のチェック機能もきっちり生かされているだろうか?以前に病院で入院している患者が調剤薬局で処方された薬を入院中も服用し、院内でも同じ薬が処方されて重複して服用し、死亡するケースがあったがこれは病院と調剤薬局との連携がうまくいっていない代表的な事例だと思う。このような事件が発生していることを考えると医薬分業がはたして効率的に機能しているとは言いがたいかもしれない。患者がお薬手帳を持っていてそれを入院中に医師や薬剤師にみせればこのような事件は防ぐことができたかもしれないが私が思うにこの「お薬手帳」も患者に受容され普及しているとは言いがたい。逆に「面倒なもの」「お金がかかるからいらない」と考える人も多くいると思う。最近薬学の実習生と話をする機会があった。かれは授業で調剤の一連の流れで「疑義紹介が一番大切」と勉強したという。なるほど患者の重複投与をみつけたり副作用を見つけて医師にフィードバックする機会として大切だと思う。しかし彼は実習で初めて現場を経験して「疑義紹介よりも投薬が一番大切」と教えられたと話していた。重複投与や副作用を患者の話から見つけるには投薬時のトーク、すなわちいかに患者から効果的に情報を得るか、というのがポイントだと思う。私は彼に「学校で勉強したことも役立つがきっと実践に出たらそれ以上に理論と実践のギャップに驚くよ」と話をした。医薬分業の理想と実情、分業率も関西でかなりアップしてきたが我々薬剤師も理想により近づけ、患者の満足度を高め、貢献できるように勉強し現状を少しでも改善できるように努力すべきだと思う。まだまだ薬剤師は医師と肩を並べて話をしたり処方提案をしたりするにはまだまだ努力不足のように思う。これがまた医薬分業がさらに発展していくための努力だと思う


最近日本でも、代替療法と言う言葉がよく聞かれるようになりました。あまり聞かない言葉ですので疑問に思っていらっしゃる方が多くいらっしゃると思います。今まで昔から伝えられきた色々な方法で、カゼに始まりガンなど重い疾患を治療してそれにより生活の質(QOL)を改善あるいは完全治癒になったケースなどが知られています。通常の治療法と組み合わせて、治癒率のアップをさせていくのが代替療法と言えると思います。最近このような代替療法と、通常療法とを統合した統合医学といわれる考え方が提唱されてきています。たとえばガンの方であれば手術や薬物療法や放射線療法などが通常療法といわれる治療法以外に、代替療法でアロマテラピー、マッサージ、気功、健康食品摂取による治療法が取入れられています。よく知られている代替療法の一つとしてガンの薬物治療によく使われるアガリクス、メシマコブ、EMXを併用する方法があります。また精神のリラックスのためにアロマテラピーを使うのも代替療法のうちの一つです。日本の医療機関ではまだこういった代替医療について積極的に説明をしていたり積極的に取り入れている医療施設は少ない状態です。医療関係者自体が代替医療について詳しい知識が少なく代替療法のような治療法は医学的な裏付けが少なかったり、患者が実践した実際に実践した経験的なものであること、個人差もあること、治癒した調査があまりされていないこと等が有ります。しかし最近では代替医療に関する科学的データも徐々に増えており、中には驚くような効果があるものもあります。しばしば近代医療では根治できない疾患に対して、代替医療による治療法で効果が認められるケースもあります。この「代替医療」が最近特にクローズアップされているのでしょうか?それは現代の西洋医学(病院で行われている医療)だけでは限界をこえる問題が多くなってきたからです。病気の原因となっている箇所を中心に(対症療法で)それらを薬剤や手術で取り除こうとするのではなく化学療法の副作用の軽減や治療中の患者様のQOLを改善することを目的に代替医療を積極的に取り入れるケースが増えています。症状や状況に応じて代替医療を柔軟に取り入れて自分自身の健康を維持していくのにこの代替医療は大きな意味を持ってくると思います。大切なのは薬でもそうですが人により合う合わないがありますので必要な情報を取捨選択して自分にあったものを取り入れるのが大切です。


現在医療現場は診療報酬改定や高齢化に伴う社会ニーズの変化の中で大きな局面を迎えていて今後益々、医療機関や看護施設、調剤薬局の場の連携が重要になってくると思います。このような状況の中で医師、薬剤師、看護師など様々な人たちとのとコミュニケーションが患者様一人一人の生活状況にあった質の高いケア(QOLの充実)や患者様のADL向上に繋がると思います。最近、チーム医療として栄養面のサポートや自宅でも病院で治療を受けていたようなカロリー管理など少しでも日常の生活に近い形や患者様の意思を尊重した医療が大切です。今回は薬局で実施している訪問薬剤管理指導についてお話したいと思います。
訪問薬剤管理指導とは医師からの指示に基づいて患者様の自宅を訪問し薬が飲めているかどうか確認したり薬が余っていれば整理して患者様の治療の向上になるように手助けを行います。時には最初は心を開いてくださらない方もいらっしゃいますがコミニケーションが深まると同時に心のケアや思わぬ盲点に気づいたりすることもしばしばです。患者さまによりQOLの向上を願うため筆者の薬局では在宅IVHも実施をしていて無菌室を備えてターミナルの患者様やクローン病などの患者様にも安心かつ質の高い医療を提供を心がけています。この場合はコンプライアンスのみならずビタミンやヘパリンの混注方法の手技の指導、注入ポンプの確認など器材に関しても指導を行っています。最近は病院でもNSTチームの発足など従来とプラスアルファの医療も提唱されています。われわれ薬剤師も薬のチェックのみならずより深い知識の研鑽とサプリメントや栄養面からも患者様にかかわっていけたらと日々努力する毎日です。
 (小田隆久:薬剤師)



今や「国民病」とまでいわれる花粉症の季節がもうすぐやって来ます。筆者もそうですが、患者本人にとってこの季節はとてもつらいです。眼のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、頭痛。この季節を乗り切るために花粉症と上手におつきあいしていきましょう。花粉症の治療には薬物療法、手術療法、減感作療法などいろいろありますが、中心になるのは薬物療法です。使う薬の種類は症状や重症度により様々ですが肝心なのは症状が出る前に薬を飲み始めることが大切です。この「初期療法」が症状を軽くさせることができます。鼻の中に花粉が侵入すると肥満細胞からヒスタミンという化学物質が出てきてそれが血管や神経の受容体と呼ばれる部分に結合してくしゃみや鼻づまりを引き起こします。しかし、早めに薬を飲んでおくと先に薬がこの受容体に結合してしまうのでヒスタミンが結合することを防ぐことができます。
☆症状別のお薬
花粉症の薬には様々な種類があります。くしゃみや鼻水などには主に抗ヒスタミン薬が主流で古いタイプ(第一世代)と新しいタイプ(第二世代)があり、最近は第二世代がよく使われます。鼻づまりなどにはロイコトリエン受容体拮抗薬といわれるものやトロンボキサンA2受容体と呼ばれる薬が使われます。症状がひどい場合はステロイド薬を内服することもありますが医師の指示のもとに調節しながら使います。また目のかゆみや鼻水などには抗ヒスタミン薬を服用しながらステロイド点鼻薬や抗ヒスタミン点眼薬やステロイド点眼薬を使います。よくステロイドの副作用を気にして使用をためらう方がいらっしゃいますが局所で使う場合は副作用はまず心配いりません。
*くしゃみ・鼻水
軽症・・ポララミン、ニポラジン
中症・・アレジオン、クラリチン、アレグラ、
重症・・アレロック、ジルテック、アレグラ、エバステル、セレスタミン
がよく使われます。特にクラリチンやアレグラは眠気の副作用が少ないといわれています。またお年よりや外出が多い人は水なしで服用できるクラリチンレデイタブという水なしで服用できる薬も最近発売されました。また漢方では小青竜湯、症状が強い人は麻黄附子細辛湯が使われます。
*鼻づまり
 軽症・・(必要なし)
 中症・・バイナス、オノン
 重症・・オノン、アイピーディー
漢方では葛根湯が使われます
*眼のかゆみ
 軽症・・インタール点眼薬、アレギサール点眼薬
 中症・・リザベン点眼薬、ザジテン点眼薬
 重症・・リボスチン点眼薬、フルメトロン点眼薬、オドメール点眼薬
*点鼻薬
 軽症・・リノコート、インタール点鼻薬
 中症・・フルナーゼ点鼻薬、ザジテン点鼻薬、リボスチン点鼻薬
 重症・・コールタイジンスプレー、リンデロン
このうち子供さんにも仕えるものに小児用フルナーゼ点鼻薬があります。
☆花粉症を治療するなら減感作療法
減感作療法とはアレルギーの原因である花粉(抗原)を注射して体を徐々に花粉に慣らしていく方法です。注射する花粉の量は症状がでないようなごく少量から初めていき、少しずつ増やしていきます。注射の回数は最初の3ヶ月は週に1回〜2回、次の2ヶ月は2週間に1回、その次は1ヶ月に1回というふうに徐々に減らしていきます。長期で続けていくと体が花粉になれていき、2年から3年くらいで症状が緩和していきます。また最近、臨床治験で注射ではなく口から花粉エキスをしみこませたパンを取り込む方法も試験中です。
☆日常生活の注意点
普段から注意して花粉を侵入させないようにしましょう。帽子をかぶったり、マスク、ゴーグル、女性のかたはファンデーションをしっかり塗りましょう。自宅に入るときは服を一度はらってから入りましょう。
今年は平年の10倍、20倍とも言われています。早めにかかりつけの先生に診察してもらい、かかりつけの薬局でお薬をもらいましょう。様々なお薬が処方されますのでかかりつけ薬局の薬剤師に疑問点や万が一に副作用が出た場合などしっかりとアドバイスを受けることも大切です。


昔は「更年期障害は病気のうちに入らない」と言われて「老いの初め」などとあきらめたり、我慢したりするのが普通だったこともありました。しかし、時代も変化して更年期障害をいかに克服していくかが健康管理として考えられるようになり最近ではホルモン補充療法や漢方療法など治療の選択肢が広がっていて、「更年期外来」など病院の専門外来もできているところもあります。40歳をすぎると女性の卵巣機能が低下して女性ホルモンの分泌が減少してきます。50歳前後でゼロに近い状態になり、これが閉経と呼ばれます。女性ホルモンの分泌低下により体内のホルモンバランスが崩れて自律神経に影響を及ぼし体調や神経に様々なトラブルが発生してきます。また、女性の40代、50代は、子どもの独立、夫の定年、親の介護など新しい環境変化がおこり、これらの要因も大きな影響を与えます。男性の場合、からだのだるさ、勃起力減退、早漏、性欲低下などの症状がみられて初めて更年期を自覚します。女性の場合は、のぼせや発汗が主な症状で突然、顔がほてったり大量の汗をかいたりします。また手足が冷える人も多いです。不眠、そううつ、イライラなど精神的な症状が出る場合もあります。 更年期障害は個人差が大きく、あまり気にならない人もいれば、日常生活に支障が出るほど重い人もいます。症状の軽い人はバランスのとれた食生活をする、適度の運動を心がける、ストレスを避けるなど、日常生活に注意することで症状が軽くなります。症状の重い人は日常生活に支障が出るようなら漢方療法、ホルモン補充療法、カウンセリングなどの方法で治療をしていく方法がいいと思います。更年期障害は、ホルモンの減少のみならずストレスや悩みや環境変化など精神的要因もからみあい症状が現れているケースが少なくありません。家族の理解や支えもとても大切なことですので更年期の女性の心身の変化を理解して家族でサポートするのも大事なことです。


筆者の紹介

おだ たかひさ
小田 隆久
1969年生まれ
大阪薬科大学卒
病院勤務から調剤薬局を経て今年の6月に独立開業,ハートフル薬局をオープン。患者様の一期一会を大切にして「真のホスピタリティー」を追求すべく一般生活や食事指導を交えて分かりやすい服薬指導を心がけている。在宅医療でも少しでも患者のQOL向上になるように取り組んでいる。