プロペシアは男性型脱毛症用薬として海外で既に承認を得た飲み薬で、05年末に万有製薬から国内で発売されることとなった。有効成分はフィナステリドで商品としては0.2mg、1mgがあり、どちらもなぜか、同価格である。もともと、萬有製薬としては1mg剤のみを発売させたかったみたいだが、いざ発売直前の臨床データを見てみると0.2mgも1mgも効果の有意差がなかったことにより、2種類の濃度の商品化に至ったというわけである。ここでポイントになるのは、今のところのデータでは、たくさん飲んだからといってたくさんの毛髪が生えてくるわけではないということ。同じく脱毛症用薬として人気の高いリアップは「濃度の濃いバージョン」のロゲインというものが海外で発売されている。リアップとロゲインを比べるとさすがにロゲインのほうが効果が大きいようではある。ちなみに、プロペシアは海外では1mgが流通している。



薄毛や脱毛でお悩みの方にはある共通点がある。それは毛根の成長期が短いということ。普通なら毛根は2〜6年かけて成長期を過ごすが、薄毛の人の成長期はわずか1〜数ヶ月。なので、毛の1本1本が細く弱い形状となる。これがいわゆる毛髪のミニチュア化である。ではなぜ、この成長期が短縮されるのか?原因の一つに、ジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンの存在がある。DHTは額の生え際や後頭部、頭頂部の毛乳頭(毛根の中心部分)に分布し、特に薄毛や脱毛症の人には通常の何倍もDHTの存在が見られる。したがって、このDHTが脱毛などの症状に関与しているのではないか、と考えられている。



プロペシアの有効成分フィナステリドは体内の男性ホルモン「テストステロン」がDHTに変化するために必要な酵素「5α還元酵素」を阻害し、DHTの体内濃度を減少させる。これによって、薄毛部分の毛乳頭内のDHT濃度が減少し、脱毛症の原因のひとつを取り除こうとするのである。結果、毛乳頭が健常な状態となり、毛髪のミニチュア化が抑えられ、普通のサイクルで毛髪が生えてくるということ。抜け毛が減り、コシのある毛髪が生まれてくるのである。



副作用としては男性が服用する限り、ほとんど安全な薬である。男性機能減弱や勃起不全の副作用がいわれるが、気にしなくていいレベルのもの。ただし、女性には効果がない薬であり、かつ、妊娠中もしくは妊娠の疑いのある女性は絶対に服用してはならない。これは胎児の外性器の発育異常をきたす可能性があるから。さらに、家族に妊婦がいる場合は服用者は錠剤を砕いたり、粉にして飲んではならない。妊婦の体内への混入の危険性があるからである。



結論から言えばプロペシアは発毛剤ではない・・ということ。使用データでは5年間、プロペシアを使用し続けて発毛した毛髪は100本前後。お望みどおりの発毛効果とはいえないだろう。ただ、脱毛を食い止める効果はあり、海外データでは約90%が現状維持以上の毛髪量をキープしており(5年間連続使用のデータとして)、もし使用していなかった場合の毛髪量とくらべるとやはりそれなりの結果を残してくれる薬ではある。また、毛髪の1本1本はコシが出てボリュームアップする。しかし、この程度の効果で1日数百円の錠剤を生涯服用し続けるのはどうかと思う。ちなみに、5年間連日服用しても1年間飲むのをやめると、また以前のように脱毛が始まるとのこと。恐怖である。私としては、どうしても毛髪数を増やしたいなら植毛のほうが(長い目で見ると)費用も安くつくし、手っ取り早いと思うが、どうしても自分の毛で!という方にはどうぞ・・。                                        (米澤 由幸)


服用は1日1回1錠。
なお、プロペシア錠は医師の診断のもと、病医院や調剤薬局にてのみ購入できます。




 社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)とは、他人、特によく知らない人の前で注目されたり恥をかくことに対して恐怖を感じ、場合によってはそのような状況に出会うことによって、誰もが通常感じるような軽い不安ではなくパニック発作のような強い不安反応を示す疾患です。患者は自分の不安や恐怖が過剰で、理屈に合わないとも感じています。患者は恐怖の対象となる状況そのものを回避しているか、強い苦痛を耐え忍んで対応しており、毎日の生活や仕事、学業などに支障が生じます。
 1980年以降、SADは学業や職業などの社会生活上の障害が大きいこと、さらにうつ病やアルコール依存といった他の精神障害が合併する確立が高く、これらが合併すると自殺率が高くなることなども確認され、最も多い不安障害として注目を集めるようになりました。

 SAD患者が恐怖を感じることが比較的多い社会状況としては以下のようなものが挙げられます。
 
 SAD患者が不安・恐怖を感じ、回避しようとする社会的状況
 ・会議で意見を言う
 ・グループ活動に参加する
 ・他人の見ている場所で飲食をする
 ・他の人達がいる部屋に入る
 ・人々の注目を浴びる
 ・初対面の人と会う、話し合う
 ・大勢の前で話す、行為をする
 ・人の見ている前で仕事をする、文字を書く
 ・権威のある人(上司、先生など)と面談する
 ・知らない人達のいる集まりに参加する
 ・人と目を合わせる
 ・人前で電話をかける

このような社会的状況の多くが恐怖の対象となっている場合を全般型のSAD、特定の状況のみが恐怖の対象となっている場合を非全般型のSADといいます。

うつやパニック障害という精神的な疾患はここ数年でメジャーな存在となり、患者がこれら疾患に正面から向き合うケースも増えてきました。しかし、SADはまだまだ、聞きなれない疾患で、しかも、自分を取り巻く社会や環境に自分が溶け込めないのは「仕方が無い・自分が悪い・性格の問題で治しようが無い」と思いがちになります。
しかし、SADはすでにひとつの疾患として認知されています。あがり症や赤面症が亢進して物事に恐怖や回避感をもつようになれば、決して我慢せずに心療内科の治療を受けてください。
(資料参照:明治製菓資料)
(米澤 由幸)